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3D 都市モデルを QGIS で表示してみる

3D 都市モデルを QGIS で表示してみる その 1

2021 年 3 月、国土交通省 Project PLATEAU による全国 56 都市の 3D 都市モデルがオープンデータとして公開されました。公開当初からかなりの話題になっていたので、既にこのデータを利用された方も多数いらっしゃるのではないかと思います。提供されているデータ形式は CityGML を中心にファイルジオデータベース形式、都市によっては OBJ、FBX などもあります。そこで、2022 年 7 月時点で、QGIS を使って 3D 都市モデルの鳥瞰表示がどのくらいの手間暇ででき、性能はどの程度なのかを確認してみました。
まずは、データを入手。今回は、静岡県掛川市の CityGML 形式のデータを使ってみることにしました。データの入手はとても簡単で、公開先のG空間情報センターのトップページの“データを探す”のキーワード入力欄に “掛川市” と入力、「さがす」ボタンをクリックします。そうすると、「3D都市モデル(Project PLATEAU)掛川市(2020年度)」が最初に検索・表示されるので、そのページに移動します。CityGML のダウンロードを行うと、約 1.6GB の ZIP 圧縮ファイルがダウンロードされます。このファイルをフォルダ付きで解凍すると、図のような構成のフォルダ、ファイルが復元されます。 udx フォルダの下にモデル毎のフォルダがあり、建物のモデルは bldg フォルダの下に格納されています。詳しいデータ仕様は specification フォルダの下に PDF 形式の製品仕様書があるので、これを参照してください。どのファイルが、どのあたりの建物データなのかは、解凍フォルダの直下にインデックスマップの PDF があるので、これを見るとよいでしょう。

フォルダ構成

次に QGIS を起動します。 今回は建物を表示したいと思いますので、bldg の下にある拡張子 gml のファイルを使います。 エクスプローラで任意の gml ファイルをドラッグ、QGIS のマップエリアもしくはレイヤパネル上でドロップします。これだけで建物データが2次元で表示できます。 建物が正しく表示できたかどうかは、OpenStreetMap や地理院地図の淡色地図あるいは写真を重ね合わせてみるとよいでしょう。ここでは、地理院地図 写真を下敷きにしました。 QGIS のバージョンによっては CityGML 形式のデータを正しく扱うことができず、XY が逆転してしまう現象がありましたが、筆者が利用している 3.22.9 ではこの不具合は解消され、正常に表示されます。

2D表示

ここから建物を 3D で表示するための準備を行います。3D 都市モデルのデータは、属性値に実際の建物高を持っているので、これを使って建物を立ち上げ、3D 表示します。 3D 表示のツールとして、Qgis2threejs プラグインを使用します。インストール方法は、メニューのプライグイン>プラグインの管理とインストールを起動、ここから Qgis2threejs を検索、インストールします。

Qgis2threejs

インストールが終了したら Qgis2threejs を起動する前に、プロジェクトの座標参照系を投影座標系に設定しておきます。具体的には、JGD2011(EPSG:6668)などの地理座標系では Qgis2threejs では 3D 表示ができませんので、掛川市の場合はJGD2011平面直角座標系第Ⅷ系(EPSG:6676)に変更しておきます。変更方法は、QGIS 画面の右下、ステータスバーにあるプロジェクトの座標参照系ボタンをクリック、ここで投影座標系に設定します。

メニューの Web > Qgis2threejs > Qgis2threejs Exporter を起動します。そうすると別ウインドウが表示されるので、Layers パネルの DEM の Flat Plane にチェック、Polygon で 3D 表示したい建物レイヤにチェックを入れます。

Qgis2threejs Exporter

この後、そのレイヤ名を右クリック、レイヤのプロパティを表示、上から Type は Extruded を選択、Geometry の Height に実測高さの属性項目名を選択します。最後に OK ボタンをクリックします。

レイヤのプロパティ設定

そうすると、地盤はフラットですが、建物は実際の高さで立ち上がった 3D で表示されます。マウスホイールで拡大縮小、ドラッグで見る角度を変更、移動できます。

3D表示

今回の確認作業で 56 都市ある中で掛川市のデータを事例として選択した理由ですが、東京都のように大都市の 3D モデルはよく目にしますが、地方の都市で、現実の世界とバーチャルな世界がどのような感じになるのかを確認したかったから、それに加えて筆者の実家があるので現実と比較してどのくらいのリアリティ感があるのかを見てみたかったからです。LOD1 でもかなりのリアリティがある!これが所感です。
今回は、地形は平面で、建物は高さ情報で持ち上げて表示するという方法を QGIS で容易にできることを確認できましたが、3D データの取り扱い性能や機能に関しては、「これから」です。2メッシュ分のデータを 3D 表示させてみましたが、これだけでも、3D 表示されるまでにはそこそこの処理時間がかかります。なので、初めて試される方は、まずは 1 メッシュ(ファイル)でテストすることをお奨めします。 3 次元点群データも QGIS で取り扱いできるようなってきていることを考慮すると、QGIS でも本格的に 3D データを扱えるようになるものと予想されます。これからリリースされる QGIS に期待しましょう。

次回は、プラグインを利用しないで3D表示する方法をご紹介します。 こちらもご期待ください。

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